就職難といわれているこのご時世にも関わらず、希望通りに就職ができて、将来結婚の約束をした彼女もいる。
これは……
順風満帆に思えていた一人の青年、拓也の身に降りかかった、恐ろしくも悲しい物語です。
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拓也がテレビ番組の制作会社に入社してから、1ヶ月以上が過ぎた。
最初はがむしゃらに指示された仕事をこなすだけだったが、少し余裕もできてきて先輩たちの期待度も高まってきた。
小さい頃から大学卒業まで、ずっと空手を習い続けてきたので、精神的にも体力的にも仕事に対しての自信はあった。
「おい、拓也!ちょっと来い。」
今日も一仕事終えて、さあ帰ろう!という時に、部長に呼ばれた。
「この発注書の数字、間違ってないか?」
壁に使うパネルが1000枚…
「はい、なんかおかしいですね……」
「おかしいですね、じゃないだろっ!すぐに調べろっ!」
「あ、はい!!」
拓也は美術部から聞き取りをした時のメモと、発注書の内容を見比べてみた。
メモには自分の字で[パネル4枚]と書いてある。
「あっ!」
数字の4と漢字の千を読み間違えて、材料屋に注文してしまったのだ。
電話でも美術部に確認したが、パネルの注文数は間違いなく4枚との事だった。
「ばかやろー!1000枚って、何トンになると思ってるんだ!そんな物、あんな小さなスタジオに入りきるわけないだろ!」
部長の声が事務所に響き渡る。
「もういい!俺がなんとか注文を取り消してもらうから、お前はもう帰れ!」
拓也はその日、入社以降初めて大きなミスをした。
ほんの少し注意してれば、起こりえない間違いだった。
今まで仕事に自信があっただけに、悔やんでも悔やみきれない。
その日、一人アパートで浴びるように酒をあおって寝た。
途中何度も夢にうなされて起きた。
仕事とは全く関係のない、夢だった。
はっきりは覚えていないが、崖から転落する夢を何度も見た。
その日から、寝付きが悪くなった拓也は、頻繁に酒を飲むようになった。
そして同じ夢を、何度も何度も繰り返して見るようにもなった。
その悪夢が拓也の人生を徐々に変えてゆく……
いや……
その時……
すでに拓也の運命は決まっていたのかもしれない……
続く〜
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